不動産の購入

昨今、「貯蓄から投資へ」あるいは「海外長期滞在希望者の増加」という日本国内での時流の変化からか、「外国人である日本人が、シンガポールの不動産を買うには、どうしたらよいのか?」という質問を、よく受けます。

ここでは、その基本事項について、説明いたします。

 

 


■ 外国人は原則としてアパート(Apartment, Condominium)のみ購入できる

シンガポールの国土(633平方キロ)は、東京23区(621平方キロ)と 同程度しかなく、土地は希少資源です。
1965年にマレーシアから分離独立後、1976年には、外国人による土地付住宅と更地の所有を原則禁止する住宅不動産法(Residnetial Property Act)が制定され、これは1973年9月に遡及して発効することになりました。1973年は第一次オイルショックの年で、小さな 国土が外国人によって買占められるリスクがあった為、急遽、制定されたものです。また、重要国策の一つである公団住宅*(住宅公団Housing Development Boardを短縮してHDBFlatと呼ばれる)も、政府補助事業である事などもあり、原則として外国人は購入できません。

なお、「原則として所有禁止」とは、換言すれば、例外があると言うことですが、対象は概してシンガポール人の配偶者と、シンガポール永住権保有者に限られます。但し、最近は、世界的な資産家や著名人誘致も企図したセントサ島の高級分譲地”セントサ・コーブ”については、要政府認可申請条件付ながら、外国人も土地付住宅が購入(建設)出来、人気を博しています。

2006年11月現在、計約115万戸の住宅があると推計され、そのうちの約80 % がHDBフラット(含むHDB Executive Condo)である。 約20 % 、約23万戸、が民間住宅である。なお、民間住宅は、土地付住宅とアパート(Apartment, Condominium)に大別され、原則として外国人は、アパート(Apartment, Condominium)のみ 購入できる。アパート(Apartment, Condominium)の総戸数は、約16万戸 (Apartment 6万戸、Condominium 10万戸)で、全体の14 % 、コンドミニア ムだけだと9 % に過ぎないが、シンガポールの政治的経済的安定もあり、外国人 の投資対象としても、人気がある。 因みに、シンガポール総居住人口417万人(2002年)のうち、外国人を除いたシンガポール人と永住権者合計約338万人(2002年)について言えば、その約86 % がHDB(含むHDB Executive Condo)に住んでおり、又、彼らの持ち家比率は、約92 % (2000年現在)と高く、それにはHDBフラットが貢献している。




■ 「外国人」とは

シンガポール国籍を持たない者(シンガポール永住権保有者も含む。)、また、外国企業や外国団体のことを示します。 (注意すべきは、例えシンガポール現地法人であっても、主たる株主が外国人や外資である場合は、住宅不動産法上は 外国企業とみなされます)



■ 商業不動産は、購入できるが、売り物件が極めて少ない

オフィスや店舗等の商業不動産は、原則として外国人による購入も可能です。但し、 シンガポールの優良商業不動産は、寡占状態にあり、また、現状、フロア単位、 あるいはユニット単位での小口売買は、一般的ではなく、売り物件が少ないのが現状です。な お、優良物件の売り物が出ても、一棟単位あるいは、REIT(不動産投資信託) になってしまいます。  


■ 信頼できる専門家の起用

不動産は、往往にして生涯の貯蓄のかなりの部分を投じてしか買えない高額商品です。また、日本とは取引事情も異なる海外不動産の場合は、信頼できる専門家、つまり不動産デベロッパー、仲介業者、弁護士を起用することが、重要となります。特に外国人の場合、法令による諸制限や、その改訂なども比較的頻繁にあるため、外国人による購入に精通した専門家が望ましいと言えるでしょう。なお、シンガポールには、日本のように完備した宅地建物取引業法がなく、概して仲介業者のレベルは高くありません。これは一部、社会問題にもなっています。物件調査(抵当権や都市計画等の確認)のかなりの部分は、日本とは異なり、弁護士業務範疇となっていることも知っておいた方がよいでしょう。


■ 購入資金の調達

1.自己資金(現金)で購入の場合:

不動産価格の上下と比べても、為替の変動要素も大きいことから、為替リスクに注意が必要です。 また、外貨の持ち込み、持ち出しに関わる送金規制は、シンガポールでは制定されていません。(他方、隣国の マレーシアやタイには、厳しい外貨規制があり、香港には無い)


2.銀行融資を受ける場合:

シンガポール・ドル建てと、それ以外の外貨建てがあります。シンガポール・ドル建ての融資については、その時点での、シンガポール政府通貨庁による通貨政策と不動産投機抑制策などで、貸し出し条件が大きく変りうるので注意が必要です。(過去に、シンガポール不動産相場が急騰した1996年5月 には、外国人、含む外国企業、は、シンガポールドル建ての住宅融資は受けられなくなったが、その後の景気下降と相場下落時に、解除された) 現在、外国人の場合、居住者であれば、通常、不動産評価額(市場価格より若干低い場合が多い)の70?80 % 程度、非居住者であれば、50? 60 %  程度、シンガポール・ドル建ての住宅ローンで借りることが可能です。




■ 売買代金決済

売買代金の支払条件は、中古物件と、新築物件(デベロッパーからの購入) で異なります。特に後者は、国家開発省や通貨庁に規制されています。

【中古物件】


- Option to purchase :
売買交渉成立時に、まず売買代金の1 % を 購入オプションとして、売り手に支払います。 これが、いわば手付金で、買い手は流すことができますが、 売り手が倍返しで流すような事は出来ません。 このオプションの有効期間は2週間です。 (例外的に、オプション金が2 % の場合もある)

- Contract: 
オプション期間14日以内に、オプションに添付されてくる行使 確認書(Acceptance)に署名し、且つ、購入代金の9 % を あわせて支払った時点で、売買契約(Contract)が成立します。 なお、これ以降に契約を解除することは出来ません。この9 % の代金については、売り手側弁護士を言わばエスクロとして、売買完了時まで預かりにさせたほうが安全です。又、Contract時点で買い手は、通常、物件の仮登記をします。 Contractの中身(諸条件)は、シンガポール弁護士協会標準約款準拠が普通です。 (オプション金が2 % の場合は、オプション行使時支払いは 8 % ) 

- Completion:
オプション行使後、8?10週間後に、残金90 % と諸費用を決済して売買は完了し、所有権の移転登記をします。

銀行融資を受ける場合は、Completion までに抵当権を設定して、融資実行を受ける必要があります。その前提として、都市計画等の確認や簡単な不動産鑑定など、物件調査が必要となり、時間を要するので、オプション取得と同時に銀行融資申請手続きする必要があります。また、Contract成立後は、銀行融資不成立を理由に売買契約解除は出来ないので、注意が必要です。


【新築物件】

- Down Payment(Option to purchase):
中古とは異なり、5 % 。オプション行使期間は、通常2?8週間で、デベロッパーのSales Purchase Contract締結時点で、行使された事になります。
なお、行使しない場合も5 % の一部は返金されます。

- Contract:
中古とは異なり、原則として15 % の支払いが必要です。なお、 一部デベロッパーは、5 % に軽減特例を提供していますが、 これはあくまで例外です。今後とも、例外が継続されうるかは、通貨庁 方針次第と言えるでしょう。

- Completion:
中古物件とは異なり、また日本とも異なり、建設の進行段階に応じて、売買契約書条件に規定されている支払いが必要となります。 TOP(Temporary Occupation Permit)と呼ばれる政府入居 許可が下りた時点で、購入価格の85 % までの支払いが必要となり、その完了後、物件引渡しを受けます。 最終支払いの15 % は、政府最終検査証明(Certificate of Fittness)が出た時点となり、通常、TOPから数ヵ月? 半年後になります。

 


■ 購入時の諸費用

【不動産仲介業者手数料】
シンガポールでは、仲介業者手数料は自由化されており、起用業者・案件 により料率が異なり得ますので、事前に確認が必要です。政府行政指導のもとに作ら れたIEA(Institute of Eastate Agents, 不動産仲介業協会)が制定した仲介手数料ガイドラインが、ひとつの目安になっています。 一般的な売買の場合、シンガポールでは、仲介業者は売り手から1?2%の手数料を受け取り、買い手からは取らないのが一般的です。これは、歴史的に、当地仲介業者は、売主の代理(Agent) であり、売り手・買い手の間の仲介者(broker) では無いことに起因しています。しかし、昨今の市場構造変化の潮流のもと、状況は変りつつあり、入手困難物件の購入などの場合に、買い手が手数料を払うケースも出てきています。(そのような物件の場合、売り手が手数料を支払わないケースもある)また、日本国内の不動産仲介業者を通じて購入すると、日本国内でも別途手数料がかかります。

【印紙税】
購入価格あるいは評価額いずれか高いほうをベースに
   ・初めのS$180,000.00については 1 %
   ・次のS$180,000.00については 2 %
   ・差引残高については 3 %
   目安としては、購入価格の 3 % からS$5,400.00を差し引いた金額に相当。
   
また、融資の抵当権が設定される場合は、別途、融資S$1000毎にS$4の印紙税がかかります。仮にS$1百万の融資を受けた場合、S$4000となります。
  

【消費税(5 % )】 注)2007年7月1日から7 % になります。
シンガポールでの住宅売買代金については免税となります。しかし住宅以外、例えば商業不動産(事務所や店舗)等は、課税対象となりますので注意が必要です。

【弁護士費用】
日本とは異なり、都市計画による土地収用計画の有無の確認等、不動産仲介業者ではなく、弁護士業務範疇となっています。弁護士費用も、最近自由化され、S$1百万の物件購入の場合、S$4000程度と言われています。なお、融資の抵当権が設定される場合は、銀行側弁護士の弁護士費用もかかります。


■ 売買契約付帯条件


【中古物件】
いわゆる「有り姿」渡しなので、物件引渡し後、修理クレームは出来ません。また、賃貸(Tenancy)が付いているときは、満期まで立ち退き要求は出来ませんので、ご注意下さい。但し、当地では、定期借家契約なので、満期時に退去拒否(居座り)はありません。 また、投資として購入する場合は、むしろ賃貸付きで買ったほうが、テナント(賃貸者)を探す手間が省けます。特に賃貸つきの場合は 家具・備品も売買代金に含める必要がありますので、交渉時に要留意。


【新築物件】
デベロッパーの売買契約に明記されています。引渡し後1年間 は瑕疵修理保証が付いています。一般的に、キッチン、バス、 フローリング、キャビネット、空調機は付いていますが、 照明は含まれません。



■ シンガポール民間住宅市場の現状と特徴 
【出遅れシンガポール不動産市況も相場反転】
96年5月の短期不動産利得税実施(註:2001年10月に解除)以降、ITバブルの一時期を除いて、 下落・低迷し続けてきたシンガポール不動産売買市況も、2005年半ば以降、反転上昇に転じました。民間住宅全体(含む土地付住宅)では、2004年通年で0.9%の上昇でしたが、2005年通年では3.9 % 上昇となっています。但し、外国人投資家に人気のある高級コンドミニアムだけでみると、既に史上最高値に迫る物件もあります。例えば高級コンドミニアムの代表格”アドモア・パーク”(築5年)や長江実業が開発した”ケインヒル・クレスト”(新築)の最近の成約値は平方フィートあたりS$2000を越えており、これはほぼレコード・プライスです。因みにアドモア・パークの2004年通年の売買価格はS$1500程度でした。 (添付図 ご参照)

【シンガポール不動産投資=金投資?】
シンガポールの高級コンドミニアムの賃貸利回りは、表面利回りで3 % 割れとなり、管理費や固定資産税を差し引いたネットでは、それを更に下回っています。現状、借入を組めば利息もカバー出来ないネガティブ・キャッシュフローになっていますが、買い手の主体であるインドネシア華人などは、大半が現金買いということもあり、むしろ、金投資(=利息が付かない)感覚で買い進んでいます。最近は、大陸中国の資本家なども、シンガポール不動産投資を増やしているようです。因みに2005年の国籍別民間住宅購入者比率は、外国人購入者全体のうち、インドネシア人が26 % 、マレーシア人が25 % 、英国人と中国人がそれぞれ10 % 、インド人が 9 % となっています。

【キャピタル・ゲイン非課税と相続税軽課】
シンガポールでは、不動産売買を“業(trade)”として行わない限り、その値上がり売却益には課税されません。また、個人の場合、不動産を相続により取得することも多いのですが、当地では相続税は最大でもわずか10 % です。また、親子・夫婦間の贈与は非課税です。この事も、低利回りにもかかわらず住宅投資をポピュラーにして いる大きな要因となっています。更に、シンガポール国民・永住権者には、CPF(Central Provident Fund:確定拠出型年金積立金のような一種の強制貯蓄)活用の為に 不動産投資をする層もいます。

【日本人によるシンガポール不動産投資】
村上ファンドの村上世彰氏が、高級コンドミニアムを購入してから、シンガポールへの不動産投資が話題になる機会が増えましたが、まだまだ、日本人による投資は少ないのが現状です。
その背景として、90年年代のバブル崩壊時、不動産投資、ましてや国外への不動産投資がタブー化されたことが考えられます。特に、日系金融機関から資金調達をすることはほぼ不可能となりました。シンガポール不動産は利回りが低く、 バブル崩壊後の利回り重視の日本国内風潮下、心理的に手を出しにくくなったことも考えられます。また、シンガポール不動産の大きな特徴である税務メリットが、日本居住者の場合は享受できないこと(最終課税地が日本であるため、日本の税法が適用される)があげられるでしょう。しかしながら、「貯蓄から投資へ」というトレンドの変化のもと、投資対象、投資先の多角化の観点から、シンガポール不動産投資に注目する向きも、徐々に増えつつあります。
また、シンガポールには、シルバー移民受入れの制度はありませんが、技術や資産を持つ外国人への永住権付与は積極的に行われています。
これは、そうすることによって、人口増を企図しているためで、日本人の、シンガポールへの移民も確実に増えつつあり、これが不動産を賃貸目的ではなく、居住用として購入する日本人の増加につながっています。更に、日本の REIT(不動産投資信託)の規制緩和で、海外不動産組み入れが解禁になると みられ、そのことがシンガポール不動産への、関心を高める結果になっているようです。


■ お断り(Disclaimer)
以上、シンガポール不動産購入の基本事項を概述していますが、これらは、筆者の一般的知識に基づくもので、内容の正確さを保証するものでも、法的助言を構成するものでもありません。また、不動産関係諸規制は、政令・通達も含めて頻繁に変更されますので、不動産購入実行に際しては、その時点で、あらためて専門家の助言を受けることを推奨いたします。

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